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どうにもこうにもな日々の備忘録

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命の証に愛だけを残せ

 
というのは中島みゆきの「愛だけを残せ」ですが。

Mさんのダーリンパパさんの様子を読みながら、自分の病棟のある患者さんのことを考えていました。
私が担当する病棟は呼吸器病棟なので、癌については気管支ファイバー(内視鏡)をして肺癌が分かって化学療法が始まって、という流れがほとんどです。
その患者さんも同じパターンで、入院してからのお付き合いは非常に長いものになっています。
化学療法のために初めて入院した時に経済的に苦しいことが分かり、病院で行っている「無料低額診療」の手続きを進めたり、高額医療貸付を利用したりとケースワーカー的に関わることが多い人でした。
その後は、毎月国民健康保険の窓口に通いながら順調に入退院を繰り返し、今回も化学療法が終われば普通に帰宅できるものとばかり思っていました。
ところが、退院支援調整会議で「この人は調整の必要はないですね」と聞くと、「むしろ今状態が悪化して、家族に病状説明するかどうかになっている。調整が重要にして困難」ということが発覚。脳メタ、いわゆる転移が進行したのでした。
確かに電子カルテ上、食が進んでいないことは書いてありましたが、それがゲーゲー嘔吐を繰り返している状態なのだとは記載だけ追っている私には想像が及ばなかったのです。
患者さんはもともと離婚したり折り合いが悪かったりで親族との関わりは絶っており、経済的な問題が出た時も、身寄りはいないからと「無料低額診療」を選んだのでした。
毎月の国民健康保険への保険料納入は滞らせてはいけないと、患者さんに代わって市役所に行きました。今保険が切れれば患者さんには莫大な医療費が掛かり、それを処理する親族もおらず、下手をすると療養を続けられない恐れがありました。
看護師長立ち会いのもと本人さんの財布からお金を預かりましたが、咳き込む以外にはぴくりとも動かず、視線は宙を浮いたままの患者さん。ついこの間まで病棟を歩いていた人がこんなに悪くなるなんてとショックでした。
それと同時に、直接患者さんに接することのない事務職員として、電子カルテを読みこなし患者さんの病状を立体的に把握する能力の大切さを痛感したのでした。

今週は逆に電子カルテの内容が分かり過ぎてしまう辛さも目の当たりにしました。
私の上司にあたる職員さんは、半月ほど前倒れたお母さんを自分の勤める病院に転院させたばかりでした。
運よくか悪くか、お母さんは自分の担当する病棟に入院。
先日電子カルテを見ていた職員さんは、昼休みに酷く塞ぎ込んでいました。曰く、「母親の状態が悪化して、今日モルヒネが入った」と。
正直、今の私の事務スキルでは、モルヒネが入ることがどういうことなのか分からないのです。
職員さんはひとしきり落ち込み、その後病棟に面会に行って泣きながら帰ってきました。お母さんは翌日息を引き取りました。
電子カルテが読みこなせる職員さんだからこそ、お母さんの病状が危機的なもので、先が長くないと予測ができたのでしょう。
下手に知識があるばかりに、余計悲しみが増したような気がしました。

人の命の終わりに電子カルテ上で立ち会うこの仕事は、実はとても因果なものだということが最近になって今更ながらじわじわと分かってきました。
電子カルテ越しに患者さんの名前だけ、処置の文字だけが流れていく毎日ですが、それでも「死後の処置」のオーダーを取り込む時、せめて事務的だけではいるまいと思うのでした。


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